シンプルな味わいがドストライク。洗練、鮮烈、生姜糖【島根・來間屋生姜糖本舗】
人生で何回「生姜糖」を食べたことがあるだろう
この世では毎日何か新商品が生まれているし、パケ大優勝なお菓子や、いつも売り切れている絶品だってたくさん。選択肢は無限にあるわけで。食べたいもん、いくらでもある。

來間屋生姜糖本舗 ひとくち糖三色セット30個・箱入り(1,437円・税込+送料)茶道が盛んな島根らしく、お抹茶入り※ ひとくち生姜糖(白20個)ひとくち生姜糖(紅7個)ひとくち抹茶糖(緑3個)
かく言う私も、來間屋生姜糖本舗の生姜糖に出合うまで興味がない側の人間だったのです。が、親しい友人に紹介してもらってからハマってリピート中。何がそんなにうまいのか。ここからは私の個人的な見解を述べたい。
好きなポイント
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1.原材料がお砂糖と生姜(の絞り汁)のみ
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2.地元らしさが伝わってくる
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3.創業からずっと作り続けている(300年超!)
1.「シンプル・イズ・ベスト」なところ

一口サイズの小粒タイプ。切り込みを入れた板バージョンもあります
原材料が砂糖と生姜の絞り汁(と水)だけなのよ、いまどき。極限まで材料を厳選している点にグッときた。
と言うのも、「シンプル」は「洗練」と似ているなと。双方は余計なものをそぎ落とした先にある、磨き抜かれたものだと思っていて。「引き算の美学」と言ってもいい。
例えば一流のアスリートや、伝統の継承者、日本料理と和菓子、日本建築、禅の思想などは、所作や作品、概念に一切の無駄がないと感じる。無に近づくほどハードルは高くなり、そのハードルを越えた者だけが到達できる最終形態であると(なんかエヴァみたいやな)。
私はそこに、挑む人の矜持を感じる。そこに至るまでに、どれだけの努力をしたんだろう、いかほどの労力を惜しまなかったんだろう、と。だから、シンプルなものに込められた思いも一緒にいただいた気持ちになる。そんな時は自然と頭が下がるし、やっぱり、ありがたくいただきたい。
2.「地元らしさ」も良い
來間屋生姜糖本舗で使用している生姜は、「出西(しゅっさい)生姜」と呼ばれる島根県の伝統野菜。出雲大社がおわします、島根県出雲市内の斐伊川(ひいかわ)流域に広がる出西地域に限定して栽培されている(同地域には民藝の窯があってね・・・ここの食器も素晴らしいので、追々ご紹介したい)。
斐伊川流域は、約1300年前の『出雲国風土記』に「肥沃な土地」として記されるほど、古くから農業の盛んな地域。川から吹く寒風「斐伊川おろし」や霧による寒暖の差が、色白の出西生姜を育ててきたと伝わる。

別名「出雲大川(いずものおおかわ)」と呼ばれる島根の第一級河川「斐伊川(ひいかわ)」。ヤマタノオロチ伝説に登場するヤマタノオロチとは斐伊川である、との説も
生産地域が限定されるのに加えて、生産量も生産農家もごくわずかのため、地元では”幻の生姜”と言われているのだそう。
希少な出西生姜はえぐみが少なく、香りも風味も抜群。後口にピリッと独特の辛みが感じられます。
同店では、この生姜を貯蔵し辛味が増した「ひね生姜」「古根(ここん)生姜」のみを原料としている。地元の生姜だけで作られる、地元らしい生姜糖なのだ。
3.「昔ながらの伝統製法」が守られている点もすばらしい
來間屋生姜糖本舗の創業が江戸中期の1715年。製法は当時から310年以上経過した今も変わっていない。コロナ渦や昨今の不景気で、有名どころの老舗が店を閉じてしまうこともある現代。当時の味をそのままいただく機会は、なかなか体験できないことだと思う。
その製法とは「砂糖水を煮詰めて生姜汁を加え、銅製の型で冷やす」。なんだそんな程度か、と早合点されるかもしれないが、製造工程の一つひとつに注目してみれば”手仕事の極み”なのだ。
例えば、煮詰める工程では炭火が欠かせない。砂糖をまろやかにするために強い火力が必要だが、素人考えでガス火が良いのではないか、と思ってしまう。しかし強火力で熱を満遍なく全体に行き渡らせるには、炭火が最適解なのだそう。
また、どの程度煮詰めていつ火から下ろすかも肝心。煮詰めすぎるとカルメラになってしまうし、逆に煮詰めが甘いと固まらない。製品の品質に直結する重要な見極めどころだ。
そして驚くべきことに、製造方法の資料はないと言う。店を営む来間家では、代々口伝えでのみ受け継がれてきた。変わらぬ味を提供し、追究し続けるには、気温や湿度、気候や材料のコンディション、己のメンタルなど、日々、刻一刻と変わっていくわずかな変化を察知し、柔軟に応じていかなければならない。

江戸時代に木綿の取引で栄えた、島根県出雲市平田地区の木綿街道。この街道沿いに來間屋生姜糖本舗がある
おそらく、最新のコンピューター制御を用いて工場で作ることも可能だとは思う。ただ、それは來間屋生姜糖本舗の生姜糖ではなく、別の何かに変化したものだろう。大量生産ではなく、最高品質のものを、自分たちの手の届く範囲で作り続けていく。その姿勢こそが、來間屋生姜糖本舗たらしめる証だと思う。
カリッとかじると、サーッと溶けていく砂糖のなめらかな口当たりと、生姜の上品な辛味。シンプルでいて、奥深い味わい。さ、あなたも一口、いかがですか。
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